この先どこかの職についたら、もう男だと誤魔化すことは出来なくなる。 両親だって、いつまでも実家に寄生している娘は嫌なはずだ。俺だって、小姑になるのは真っ平御免。 「自由か……」 俺に自由など訪れるのだろうか? 未来が見えない。ここまで真っ暗な人生も珍しいだろう。 「ん? どうした?」 でも今は、 「ううん、なんでもない」 吹けば消える灯だけど、確かな光がそこにある。 それだけで、俺は十分なんだ。