「でも……」


それでも二千円をしまおうとしない彼。


本当に優しい人なんだと思うと同時に、このままじゃ収拾がつかないと感じた俺は、


「今日はありがとございました。お休みなさい」


悪いと思いながらも、逃げるようにその場から立ち去った。


駅から自宅まで徒歩で十五分。


小雨だし傘を差さなくても大丈夫だろう。ダッシュで帰ればそんなに濡れない。


途中後ろからまた声をかけられた気がしたけれど、気付かないふりをして小雨の中を駆け抜けた。






―――これが俺と竜司くんとの出逢いだった。