タクシーなんていつ戻って来るかわからない。寒いし金もかかるから、漫画喫茶で始発を待つと彼は言った。


確かに名案ではあると思う。幸い近くに漫画喫茶があるし、平日だから値段も手ごろだ。


「じゃあ、これ使ってください」


財布から二千円取りだし、無理やり彼の手に握らせた。


多分足りないと思うけど、残念ながら財布の中にはこれだけしかなかったのだ。


「いや、悪いよ。たかがパスモでこんな」


彼は受け取ったお札を返そうと二千円を突きつけるが、俺は両手を背中に回してそれを拒否する。


「俺のパスモ結構入ってたんで、寧ろ安上がりですから」


さっき改札口を通る時に残高を確認したが、四千円弱残っていた。


このままパスモが無くなっていたら、四千円損したことになる。


彼の謝礼として二千円渡しても、差し引き二千円得したことになるわけで、安上がりというわけだ。