年上の社会人という事実に少なからず衝撃を受けていたようで、俺の事細かな説明が終わると「そっか」と一言だけ呟いただけだった。


僅かな沈黙の後、神妙な面持ちで太一は言葉を紡ぐ。


「俺じゃダメなのか?」


予想していない言葉に一瞬だけ戸惑ったが、すぐに呆れて鼻で一笑に付してやった。


「いい加減キレるぞ」


「俺は本気だ。ガキの頃からずっと」


「ガキの頃からお前にイジメられてた記憶しかないんだけど? 男女だなんだって、ずっと俺のことからかってたくせに」


「それは……照れ隠しというかなんというか……。お前だって男なら俺の気持ちがわかるだろ!」


「都合の悪い時だけ俺を男扱いするんだな」


そういう所が嫌なんだよ。


太一は俺を女として見ている。男女のどこに惚れたのかわからないけど、太一は俺を女として好きだと言っている。