せめてタクシー代だけでも払うと申し出たが、彼は大丈夫だからと言って受け取ってくれない。


払います。大丈夫。と交互に言い合っている内に、駅前のタクシー乗り場に到着した。


が、肝心な時に限ってタクシーは捕まらない。


おそらくこの雨が原因だろう。


残業か飲み会かわからないが、スーツを着たサラリーマンが次から次へとタクシーに乗り込み、停車していたタクシーは全て出払ってしまった。


取り残される俺と彼。


「……本当にすみません」


「いや、俺の方こそゴメン。なんか気ぃ使わせちゃって」


まずい。凄くまずい。


暦の上では春だけど、まだまだ肌寒いこの季節。


おまけに雨まで降っているせいで、体感温度はかなり寒い。


「仕方ないから今日は漫喫で過ごすことにするよ」