「どこまで力込めていいのかわからない」

そう、私の手を握ったまま、彼が呟いた。
あたしの手や指が、彼にはそんなに壊れ物のように見えるのだろうか。

たしかに、自分の手を見ているだけじゃわからないけど、彼の手と比べると、自分の手が随分と小さく見える。
爪なんて、半分くらいしかない。

ああ、あたしって女の子なんだなぁ、なんて、こんな所で実感してしまう。

「別に、壊れたりしないよ」

そう言うと、さっきより強く、でも控えめに、私の手を握ってくれた。

バスの揺れが心地良い。

彼の肩に、頭をもたれる。

座るとね、貴方が近いから好きなの。

「なんか、眠くなってきちゃった」

「いいよ、寝ても」

彼はそう優しく笑う。

その笑顔が、声が、すごく好きなの。

本当に寝るつもりなんて勿体ないからさらさらないけど、あたしはちょっとだけ眼を閉じた。


君と手は繋いだまま。






ずっとこのままだったらいいのに



*このまま離さないでいて*