きみが見た光

「…忘れ物。無いと、困るでしょ」

差し出してきたのは、砂で少し汚れた単語帳だった。

（こんなモノのために…？）

別に単語帳なんて、無くったって困りはしない。俺は怪訝そうに差し出された単語帳を受け取った。

「…どーも」

くるりと振り向き、また歩きだす。

つくづく思う。俺は素直じゃないな、と…

「待って」

そんな俺の背中に、彼女は呼び止める。俺は足を止めた。

「…どうしてうちの前で待ってたの？　心配、してくれてるの…？」

探るように、彼女が言う。

…どうしてって
そんな理由は、一つしか…

一瞬、飛び出しそうになった言葉を飲み込んで、冷静に考える。

ゆっくりと振り返るのと同時に、俺は口を開く―