「タケおじさーん!!来てやったぞ〜!!!」

甲高い声が牛舎に響いた。

タケルはハッと振り向く。


「ユ…ユウキ?!」

隣町に住む、甥のユウキのお出ましだ。


「って言うことは…」

シンが呟いた。


その直後

「こんにっちは〜!!」

と、ユウキに負けず劣らずな甲高い声が牛舎に鳴り響く。


牛舎にいた牛達はその甲高い声に共鳴されたか

モォォ〜!!
と言いながら後ろ足で寝床の蕨を蹴飛ばす仕種をする。


「あー…牛さん不穏状態…」

「ひ、ひとみ……!?」

タケルとシンは同時に呟いた。



タケルは驚いていた。
ひとみは18の頃結婚し、隣町に引っ越した。
それ以来は牛舎になんか顔すら出さなかったのに…。



タケルの驚きに気づいていないのか


「やほーい!!ひとみおねーさんのお出ましだよーん!!元気だった〜?シーンくーん、タケル〜」


「ひ、ひとみ!!お前正月以来顔見せて無かった癖に、突然どうしたんだよっ?!」


「なによ〜私が、実家に正月とお盆以外に顔出しちゃいけないって言うの〜?」


「や、違くて…!!」
そう言おうとしたタケルに対し、シンは

「いやぁ〜ひとみさんっ!!いつ見てもお綺麗ですねっ!!」と声を掛けた。


「あら、シンくん、相変わらずお口上手ね」


と、シンのほっぺたをふにーと軽く両手で引っ張る。