『カインの顔をよく見てみろ。今まで見たことねぇくらい穏やかな顔をしてやがる』



ジオラさんの言うとおり、カインの顔は苦しいとか辛いというような顔はしていなかった。



『カインから、騒ぎが収まったらこれをお前さんに渡すよう頼まれてた。必要になるだろうと』

「これは……」

『アルファナと交わした契約書だ。アルファナと手を組んだレイドがここで探していたのは恐らくこれだろうよ』

「レイドが……アルファナさんと手を組んでた、なんて……」

『この契約書と引き換えに、レイドは支援してもらう手はずになってたみてぇだ」



カインはレイドの異変に前々から気付いていたんだ。


自分の事で精一杯だったはずなのに、私の事まで気にかけてくれていたなんて……。


本当は凄く優しくて、そして凄く不器用な人。


私はジオラさんから契約書を受け取った。


震える手でしっかりと。