泣いてる……。



「アイシャ?」

「……お母、様」



曇っていた瞳に少し光が戻ったような気がした。


お母様との思い出を思い出しているのかもしれない。


それは楽しい思い出なのか、悲しい思い出なのかは分からない。


けれど感情を表に出してくれた事に少しだけ安心した。


アイシャの顔に流れた涙を拭っていると、目線がサイドテーブルに向いている事に気が付いた。



「まだ飲む?」

「…………」

「はい、どうぞ」



喋ったのはさっきの一言だけで、もう言葉を発してはくれなくなってしまったけれど、チビチビと飲んでくれている姿を見て頬が綻んだ。