彼岸と此岸の狭間にて

店の前で時計を見る。             
(もうすぐ8時だ。母さん怒っているだろうなあ!?)
            
日本刀を自転車の前籠に対角線上に入れる。                
(お金に余裕が出来たからコンビニでも寄るかな!?)                                                                                                                       
「ただ今」                   
静かに玄関を通り抜け、脱兎の如く階段を駆け上がる。                
(さてどこに隠そうか!?)                       
部屋を見渡すが適当な場所が見つからない。                
(ここは定番のベッドの下に…)                                        



「葵!帰ってるの!?」             
階下での母の甲高い声に一瞬『ドキッ』とする。

(ヤバ!ご機嫌斜めだ)             
「う、うん…」                 
「早く食事になさい!!」                    

ベッドの下に刀を仕舞い込んで急いで部屋を出る。                                     




母親も美優も葵に一瞥もせずに白いご飯をパクついていた。

「父さんは?」                 
ここは長年の戦いの経験から話題を逸(そ)らす作戦に出る。                    
「今日も遅いって…」              
母親の怒りは最高点に達しているようだ。ここで怯(ひる)んでは負けてしまう……            

「ほら、美優…」                
コンビニの袋を美優の目の前にぶら下げてみせる。