彼岸と此岸の狭間にて

店主が戻って来る迄店の中を見て回る。色々な物があるのだが『値打ち物』があるとは到底思えなかった。                      
(どうやって暮らしているんだろう!?)                 
何度か来てはいるものの他の客を見た事がなかった。            
                      
「お待たせ」

店主が新聞紙で『グルグル巻き』にした日本刀を胸に抱えて表れた。                  
「これで大丈夫だと思うけど…今、領収書を出すから」

「あのお〜っ…」

「うん…何?」

「この刀はいつ頃の物なんでしょうか?」                 
「本物の刀なら刀身の所に『銘』が刻印されているからそれで大体分かるんだけど…何せ『竹光』だからね…そうだなあ、江戸中期辺りかな!?」             
「江戸中期…ですか?」             
(日本史は苦手だからなあ。『江戸中期』と言われても全然『ピン』と来ないや)            
「まあ、何かあったらまた来なさい…はい、領収書」            
「ありがとうございます」            
「大事にしてやって!そうじゃないとその持ち主の『霊』が出て来るよ」              
「えっ、本当ですか!?」            
「ははははっ、冗談だよ、冗談」

「あ〜っ、びっくりした。勿論、大事に扱います」             
領収書を無造作に上のスゥエットの右ポケットに突っ込むと礼を言って店を出る。