「左様か!?どれ、酒を買ってくる。雪之、葵殿の相手をしていてくれ!」              
山中が出て行った後、葵は座敷に上がる。                 
(座る所が…この辺で良いか!?)              


「雪之殿が上京した訳は?」

「はい。姉上の看病と子供達の世話を…」                 

3人の子供達は眠そうな顔をして雪之に寄り添う。


「何故、今の時期に?」             
「いえ、前々から言われていたのですが、故郷に年老いた母上がおりましたので…」                      
「母上様お一人では寂しいでしょう!?」                   
「先月、亡くなりました」            
「あっ、それはとんだ失礼な事を…」                   
「いえ、大丈夫です。やっと身辺の整理もつきましたので…それで…」                
「そうでしたか!?」              
「葵様は今は浪人の身のようですが、以前は?」              
(う〜ん、どうしようかな、昔、テレビで見た『旗本退屈男』…)                 
「ある旗本の家臣でしたが、その方がお亡くなりになって誰にも奉公せずに現在に至っております」

「まあ!?江戸出身ですか?」

「そういう事です」               
(嘘も方便!)                 
「ところで山中殿が浪人になられた経緯は?」                           
3人の子供達が欠伸をし出したので雪之は寝かし付ける準備に入る。                 
「さあ、母様の所に行きましょうね!?」


奥の母親の所に1人ずつ運ぶ。最後の珠美を運び終えるとまた元の場所に戻って座る。