彼岸と此岸の狭間にて


「そうだよねえ!?…じゃあ、この最後の文の意味分かる?」            
「『彼岸と此岸の狭間に身をゆだねその存在意義を見い出だせば自ずと道は開かれん』か?……う〜ん、分からない。お祖母ちゃんは元国語の教師だから何か分かるかもしれないから聞いてみな!」

「うん、そうするよ。でさあ、祖父ちゃんのお父さんて何やっていた人?」              
「私の父親か?明治政府の役人だったよ。ただ、何かの事情で辞めたみたいだけど…その後は、葵、お前が住んでいる町でお百姓をやっていたんだぞ」

「えっ、そうなの?ふ〜ん、知らなかった。お祖父ちゃんはあの町の出身なんだ?」

「そうだよ」

「それじゃあ、その前の『紫馬靖成』という人は?」

「武士だったとは聞いた事があるけど詳しくは知らないなあ…兄貴なら知っていたかも知れないけどもうこの世にはいないからなあ」            
「………」                   
「余り役に立たなかったなあ!」

「そんな事ないよ。ありがとう」                                 
葵は巻き物を丸めてリュックにしまう。                              
「葵!」                    
「ん?」                    
「何かに興味を持ってそれを極める事は素晴らしい事だと思う。だが、もしお前が大学進学を希望するのなら今やるべき事があるはずだ。そこを取り違えないようにな!」                   
「うん、分かったよ」

「それからこの事は祖父ちゃんの胸の内にしまっておくから…」

「ありがとう。お祖父ちゃん、紙とペンを貸して!」                                    
葵は徳蔵の残した言葉を書き記す。