彼岸と此岸の狭間にて

応対に出たのは体のがっちりした背の高い(170センチぐらいと思われる)、顔中毛むくじゃらの仁王のような男である。                
「何用で?」                  
「先生と一手お手合せ願いたい!?」                   
「承知つかまつった」              
即答である。



(あ〜あ、思った通りだよ。大丈夫なの、山中さん!?)                                              
山中はその男の後を付いて行く。葵も仕方なくその後を追う。                                
稽古場も今までの道場と違って少し入り口から奥まった所にあった。稽古中なのか喚声や怒号が聞こえる。                             
葵は内心『ドキドキ』、背中に冷たい汗が流れる。口も喉も『カラカラ』。これから命を掛けた真剣勝負を見るのだ。                                                     
一際大きくなる喚声や怒号の入り口の前で山中に続いて葵も一礼をする。                              
「止め〜っ!!!」               
その男の一声で声と動きが『ピタリ』と止まる。                             
葵が恐る恐る顔を上げると80程の両目がこちらを向いている。圧巻である。同じ40人でもクラスメートの親しみのある、優しい目ではないのである。                                  
「この御人(ごじん)達とこれから試合を行う!」              
稽古場内が騒(ざわ)つく。今まで道場破りを受けたことがない感じである。            
「お相手は拙者だけで…」            
山中が一歩前に出る。              
「左様か!?皆の者、場所をあけい!!」                 
蜘蛛の子を散らすように『サッ』と稽古場の両端に2列になって正座する。