彼岸と此岸の狭間にて

〔4〕

日が傾き掛けていた。              
『暗さ』の他に葵を困惑させている物がもう1つある。それは『時間』である。時間が全く分からない。                   
「山中殿、今、何時頃でしょう?」                    
「何時!?…あっ、時(とき)の事で御座るか!?…七つ時辺り(午後4時)ですか…!?」                 
(七つ時って言われても…)                       
「葵殿、日も暮れてきたようですし次を最後にしましょう!!」                                                                   
葵は無我夢中で山中と行動を伴にしてきた為、自分がどこに居てどこを歩いているのか皆目見当がつかなかった。江戸ということは分かったが…                                                          
「じゃあ、ここにしましょう!」                     
そんな事を考えて歩いているうちに本日の最後のターゲットの道場に着いた。             
(これで最後か!?頑張るぞ、って何もしてないけど、ふふっ…)                  
山中の後に付いて門を潜ろうとした時に違和感を感じる。                      
(あれっ?今までの道場と違って門構えがしっかりしているような…!?)              
葵は立ち止まって門の所に掲げてある看板を読む。                                     
『松山流免許皆伝  尾上十三郎』                                
(免許皆伝!?これはヤバいだろう!?絶対にヤバイって!)                 
「山中殿〜っ!」                
声は届かないようで、山中は既に道場口で声を張り上げていた。