「おはよう、赤沢」               
「おう、それより担任の桐山が呼んでたぞ。『お昼休みに職員室に来い』ってさ。何やらかした?」

「別に。多分進路の事だろう!?」

「なんだ、詰まらない」

「それよりお前どうするんだよ?」                   
「どうするって?」               
「進路!」                   
「高校卒業してすぐ働くってのもなあ…大学に行く頭はないから専門学校にでも行こうと思っているんだ」            

「専門学校かあ!?」              
「葵、お前は?」                
「俺!?…うん、一応大学に行こうと思うんだけど…」

「そうだよなあ、お前、小中と勉強できたものなあ…何でこの学校に来たんだよ?」

「それは…」と言い掛けた時、教室の前のドアが開いて1時限目の教科の先生が入って来る。                  
葵は慌てて赤沢の右斜め前の自分の席に着く。               
「その話はまた今度…」             
赤沢の方を振り返り小声で囁く。                                                                                                                     


「葵、帰り『ゲーセン』でも寄っていくか!?」              
6時限目の授業を終え、帰り支度をしている葵に赤沢が問い掛ける。               
「わりぃ、今日はこれから行く所があるんだ」               
「まさか、デート!?…のわけないか。お前、『香澄(かすみ)』ちゃん一筋だものな」                    
それには応えず「そういうわけで、じゃっ…」と言って葵は急いで教室を出る。