真夜中のお寺の墓場。『しとしと』と雨が降っている。                       
その闇の中に息吹を感じる。ある墓の前にひとりの男が立っていた。                 
(山中殿、お久しぶりで御座る!…幸恵殿も……

雪乃は新しい亭主を貰い幸せに暮らしております。山中殿のお子や綾野も…)              

葵は墓の前にしゃがみ込むと、小刀で墓石に何かを彫っていた。                   
(血脈は絶える事無く、時空をも超えるもの。近い将来、必ずやどこかで会えるでしょう!それまでは静かにお休み下さい)                            
葵の姿が青白く輝き出すとその光はやがて天空へと飛び立って行った。                               
静寂の中に時折聞こえる蛙の声。                     
山中の墓の前にはあの『日本刀』が立て掛けてあった。