「今日、担任の桐山先生から電話があったわよ!!あんただけが進路の希望書提出していないんですって…」                       
もうそろそろ言われるであろう事は予想していた。                   

「あっ、その事!?」              
「その事じゃないでしょう!!あんたの一生に関わる大事な問題なんだから…」            
「へいへい。明日出します」                       
葵は体勢を建て直し階段を再び上り始めようとするが、母親の攻撃は更に続く。                       
「それから、あんた…」             
(まだあるのかよう…)             
「三者面談の事も言ってないでしょう!?」                
「それは…今日言おうと思って……」

台所の方から何か異様な音が聞こえる。


「母さん、台所で何か吹いてるよ」

「えっ!あら大変!!すっかり忘れてたわ!全く、もう…」               

言いたい事も言えずに台所に慌てて戻って行った。                  
「このダメな性格は母さんに似たのっ!!」              

台所に向かってそう叫んで階段を駆け上がる。               








自室に入ると部屋の電気を点け学生カバンをベッドの上に放り投げる。                
南に面している窓のモスグリーンのカーテンを閉め、制服を脱いでブルーの上下のスエットに着替える。                         
(4時か!?今日は体育で頑張り過ぎて疲れた…)             
ベッドに腰を下ろして横たわる。