彼岸と此岸の狭間にて

「所長!!遺伝開発研究所の渡辺さんから電話が入ってます」                
研究員の玉置江利子が入室して来る。                       
「やっと来たか、待ってたよ…青柳君、また後で」             
(紫馬先生の計画って何だろう?)                                                                                                                                
東京 四ツ谷 日本料理屋『椿』                     
「お疲れさん」                 
「お疲れ様でした」               
紫馬と青柳がビールで乾杯をする。

「ぷはあっ!……いやあ〜っ、上手いですねぇ〜っ」

青柳はコップ1杯を軽く飲み干す。


「中々静かで良い所だろう!?」

「四ツ谷にこんな静かな所があったんですね」                                                                            
美味しい料理に舌鼓を打ちながらたわいもない話で時を過ごす。                              
「ところで、渡辺先生から今日電話があったでしょう!?とても喜んでいたように見えたのですが、何だったんですか?」                 
ビールから日本酒に切り替えていた紫馬はお猪口(ちょこ)を『グイッ』と飲み切る。                     
「うん、それが私の計画と関係があるんだけどね」             
「その計画とは…!?」             
紫馬は暫らく黙ったままだった。                                             
「青柳君、君はまだ独身だから親の気持ちは分からないと思うけど…」                
「そうですね」