彼岸と此岸の狭間にて

「でも、よく、研究の材料として『葵』君の脳を提供をする決断をしましたね!?」                      
「体育館で見た時に最初はダメかと思ったけど、少し、生体反応があったような気がしてすぐにスタッフを呼んだんだよ。それで応急処置を取って…

病院に運ばれる途中、心停止はしたけど脳だけはなんとかなると思ってね…」

「危機一髪でしたね!?」            
「後30分遅れていたら本当にダメだっただろうね」            
「でも、こんな姿の葵君を見るのは忍びなくて…」             
「あはははっ、それがさっき言った解釈の違いさ!」             
「そうか、これが体がないと生きているとは考えない総合的解釈の立場…ですね!?」                     
「そう…でも、僕にはね、実は、壮大な計画があるんだ!」

「何です、それは?」              
「うん、ここでは言えないけど、青柳君の協力も必要だから…」

「はい、是非手伝わせて下さい」

「今日は夜空いている?」            
「大丈夫です!」                
「じゃあ、僕の行きつけの日本料理屋に行こう!?あそこなら個室もあるし…」            
「分かりました。ところで、奥さんと美優ちゃんはこの事は?」

「知らない!」                 
「教えてないんですか、どうして?」                   
「自分の身内のこんな姿は見たくないだろう!?あらゆる機器に結び付けられた脳だけの姿など!!

それよりも、思い出の中に残る在りし日の葵の姿の方が生きる糧になるとは思わないか!?」

「確かに、そうですね!?今の姿は美しいとは到底言えませんね!?」