〔2〕         

葵の葬式が済んで10日後の事。                     
『ピンポ〜ン…』                
平静さを取り戻しつつある午後の紫馬家に来客を知らせる呼び鈴が鳴る。                  
「どちら様ですか?」

『長谷部と申します』

「どちらの長谷部さんですか?」

『三丁目の骨董屋の長谷部ですが…』

「骨董屋さんが、どうして?」

『葵さんが注文していかれた物が1週間程前に入荷したのですが、引き取りに来ないものですから…』              


母親の美佐枝はすぐに玄関のドアを開け、長谷部を中に入れる。                                            

「息子は10日前に死にましたけど…」                  
「そうだったんですってね!?さっき、知りました」            
手には細長い箱のような物を持っている。                 
「お悔やみ申し上げます」            
「わざわざご丁寧にありがとうございます。それは?」

「葵さんが注文された物で…」                      
美佐枝は受け取って箱の蓋を開ける。                    
「これは?」                  
「日本刀のレプリカみたいな物です。『竹光』といって、木刀のような物と考えていただければ…」               
「あの子、こういう物に興味があったかしら…!?」            
「実は、今年の2月頃でしたか、お友達と冷やかしのつもりで寄ったのでしょうけど、刀を興味有りげに見ていましたので、少し、面白い話をして上げました」            
「それはどんな?」               
「『竹光』での切腹の話です」