彼岸と此岸の狭間にて

予想外の所にいる自分に気付く。                     
電車の中だ!                  
(何故、電車に乗っているんだ?う〜ん……夢の続き!?)                                
車内アナウンスが東京行きの電車であることを告げている。                      
カバンの中から携帯電話を出して日付と時間を確かめる。                      

(6月20日[水]午後1時36分……あっ、思い出した!そうだった。それで授業をふけたんだった…)             
昼時(ひるどき)の比較的空いている電車だった。                   
車内の中央に位置する長い座席の端寄りの所に葵は座っていた。

左には若いサラリーマンが俯(うつむ)いて寝ており、前には大学生と思(おぼ)しき女性が吊り革を持って立っていた。                      
(間に合うかな!?)                            







『ガゴ〜〜ン、ガガガガッ〜』                      
突然、激しい揺れ伴にけたたましい音がしたと思ったら、床に叩きつけられた。            

電車が傾いている事が分かった。

窓ガラスの割れる音と電車のブレーキ音。

(脱線だ!)
            
自分の隣に先程の女子大生が崩れ落ちてきた。               
あちこちから悲鳴や呻(うめ)き声、泣き声が聞こえる。                      
激しい音を立てながら尚も傾き続ける電車。土煙や火花を撒き散らして走っている。                 
(死ぬのか……!?)              
葵は腹部に背中に激しい激痛を覚えると、そのまま気を失った。