和尚とその奥さんに礼を言って久遠寺を後にする。             
(夜、香澄にでも電話するかな!?)                   
思いもよらぬ展開に気落ちしていた。さすがに自分の家の墓を調べれば何かの手掛かりは得られるだろうとは思っていた。逆に、出口のない迷路に入り込むとは……          
(明日は卒業式かあ!?もう、どうでもいいやって感じ…)                     
そんな事を考えながら電車の切符を購入した。                                                                                                                        



「葵、この後どうするんだよ?」

卒業式、謝恩会と終了して『どこかへ繰り出そう』とクラスで話が盛り上がっていた。               
「俺、明日、本命の発表なんだよ…」                    
「そうか、それじゃ『残念会』を兼ねて飲み行こう!」             
「なんじゃ、そりゃ!!」           
「夕方6時に駅前の居酒屋『五郎』に集合!!ふけるなよ!!これから葵とは今まで通りには会えないんだから…」                   
「分かったよ。それでお前彼女とはどうなってるんだよ!?」

「ふふふっ、聞きたい!?写真もあるぞ、見る?」                 
待ち受けの二人仲良く並んでいる写真を見せてきた。          
「可愛いだろう!?俺の愛しの『麻理亜(まりあ)』ちゃん!!」      
(げっ、この顔で『麻理亜』とはこれ如何に?ホント、『蓼食う虫も好き好き』だよな!)                    
「じゃ、俺、一旦、家帰るわ」             
「おう、遅れるなよ!」                           



校門を出て夕闇迫る日差しの中、気分的に重い足を引き摺(ず)るように歩く。