彼岸と此岸の狭間にて

〔2〕         

不知火神社に近づくにつれて初詣に行く人、帰る人と出会うようになる。                           
赤沢とたわいもない話をしていくと右手に懐かしい家が見えてきた。                 
(長谷部さんの家だ!半年ぶりか!?)                              
「赤沢、ちょっといい?」            
「えっ、何が?」                            
葵は赤沢と別れて一人長谷部家の前に立つ。狐に包まれたような顔をした赤沢が遅れてやって来る。               

家中カーテンが閉められひっそりと静まり返っていた。庭の片隅に『△△不動産』の立て札が打ち込まれてあった。                                
「何、葵の知り合い?」             
「うん、ちょっとね…」             
「あれっ、ここってもしかしたら去年の節分の時に立ち寄った……『骨董屋』じゃなかったっけ?」                           
葵は目を閉じ静かに手を合わせる。                    
(長谷部さん、お久しぶりです。

長谷部さんに出会わなければ平凡な人生だったかも知れません。

まだ『巻き物』やあの刀がどんな意味を持っているのかは分かりませんが…何か大きな転機にはなるような気がします。

謎は必ず解明します。安らかにお休み下さい)                                   
「赤沢、行こうか!?」             
「何やってるの?どういう事?」                     
葵はあれ以来長谷部さんと仲良くなった事、そしてその長谷部さんが先日亡くなった事だけを赤沢に話す。                
「そういう事だったのか!?急にお祈りを始めるから何かと思ったよ!」               
「スマン、スマン…」                                    
長谷部家を後にしていよいよ小高い林に囲まれた不知火神社の入り口に到着する。