「あっ、青柳さん、いらしてたんですか?」

「葵君、新年あけましておめでとう!」                  
「おめでとうございます。そして、御婚約おめでとうございます!」                 
「えへっ、照れるなあ…あっ、紹介しておこう!僕の妻になる『中里麻衣』さんだよ」                     
葵の両親とソファに座って話していた着物姿の女性が立ち上がってクルリと振り返る。

(おっ、可愛いらしい!)

「紫馬葵と言います。青柳さんには小さい頃、よく遊んでもらいました」               
「初めまして。中里麻衣と言います。葵君の事は、彼、じゃなかった、高志(たかし)さんからよく聞かされていますよ」                  
笑った時に出来る笑窪がその可愛らしさを倍増させた。


青柳は葵の父公彦が勤める研究所の部下で、今度、葵の両親の仲人で結婚する事になっていた。                  
「今年は受験だね!?どう、順調?」                
「ぼちぼちです…」               
「葵君、血が苦手だからなあ!それさえなければ医学部も楽勝なのに…」               
「えっ、何?」                 
麻衣が驚きの声を上げる。

「あっ、まずかった!?」            
「いえ、良いんです…麻衣さん、実は、俺、血がダメなんです!」

「そうなんだあ!?」                
「原因は分からないんですが、生まれつき血がダメで、血を見ると目の前が『真っ赤な血の海』になって体が固まってしまうんですよ」                    
麻衣の目には憐憫(れんびん)の情が見えたので直ぐ様取り繕う。               
「でも、自分の血は結構平気なんですよ…」                          
そう言った後、赤沢の姿を探す、と、美優と談笑していた。                     
「赤沢、そろそろ行こうか?じゃあ、青柳さん、麻依さん、ごゆっくり…」