彼岸と此岸の狭間にて

「あっ、買ってきてくれたんだ!!」                   
美優が箸を止め歓喜の声を挙げる。                    
「何?」                    
手に取ろうとする美優の動きを制し母親が袋の中を覗き込む。                    

「またお菓子!!あんたはもう…だからご飯が食べれなく…」                    
(しまった!火に油を注いでしまった。ここは他人の振りを…)                   
葵はそっとテーブルに座ると味わうこともなく胃の中に食物を流し込んだ。              
美優の方を見るとビニール袋を死守した様で膝の上にしっかりと抱え込み、その後も平然と食事をしていた。              
(さすが我が妹。天晴れなものよ)                                                                                                        

部屋に戻ってはみたものの刀の事が気になって仕方がない。                     
(取り出して見てみたいがこんな時に限って…)                          
『ドカドカ』と階段を上る音が聞こえてきたかと思うと『ガチャッ』と部屋のドアが開く。                   
「お兄ちゃん、お菓子ありがとね」                    
ドアの隙間から顔を覗かせる。

「美優!ドアを開ける前に『ノックしろ』といつも言ってるだろう!」                  
「良いじゃん、別に。兄妹なんだから…」                 
「はい、はい。で、何だ、用事は?」                   
「うん、英語、少し教えて欲しいんだ!?」                
「分かったから後で持って来い」

「サンキュー、だからお兄ちゃんだ〜い好き」               
「お前に言われてもな…」            
(仕方ない。みなが寝静まってからにするか)