渡辺は色めき立つ友人達の間をスルリと抜けて、さっとひなのカバンを持つ。

「おーgentleman☆」

と、無駄に発音よく友人が呟いた。


なーにがジェントルマンじゃ。


…って、しまった!!人質を取られた!

渡辺はもう教室の扉を出ていて。


…びっくりするぐらい素早い。


ひなは友人達が笑顔で見送るのも無視して渡辺の後を追った。

「はぁっはぁっ…っちょっと待ちなさいな!」

ポニーテールを振り乱してさっさか歩く渡辺の袖をガシッと掴む。

案外すぐに追い付いたなとひなは少し訝しげに渡辺を見上げた。

学校の廊下を不本意ながら並んで歩く。

「遅かったね、ひな。」

ニッコリこちらに笑いかけてくる渡辺にひなは殺意を覚えた。

…コイツいつから私のこと下の名前で呼んでるんだ。

どうでもいいことにイライラしつつ、ひなは落ち着く為に大きく一回、呼吸する。

ふー…っ


言わなきゃいけないことがある。


「あのさ、渡辺。なにがなんでも今回のは冗談が過ぎない?わたしも一応女だしさぁ…」