彼らの前にあるのは人の形ではない種族や精霊といった類のもので互いに集まり、群れを成すこともあったけれど社会性は見られない。

「容姿においてはエルフは最も美しいとされているな。しかし、古の民ほど長寿ではないだろう」

「そうじゃな。長生きは心を豊かにしてくれる。さりとて、どちらにも緩やかな滅びが待っているだけじゃよ」

 目を伏せて発した声に少しの憂いが見て取れた。

「わしが本当に羨ましいのは人間じゃ」

 人間は最も新しい種族だが今も繁栄を続けている。

「我らは普通に暮らしていれば死ぬ事は無い。それが感情の起伏を緩やかにする。人間のように、強い欲望も持ち合わせていないため大きな争いもない。しかし、それは種族の繁栄を妨げるものに他ならなかった」

 子孫を残す事にあまり執着しない。

 かつて大地を支配していた古の民は、気がつけば今やユラウス一人となっていた。