「──っう」

 徐々に力を込めるネルサの気迫に圧倒される。

 長きにわたる怨嗟(えんさ)がネルサから染みだし、じわりとシレアを取り巻いていった。

[シレア! 臆するな。そなたの意思は誰よりも強く純粋だ]

「黙れ! 低俗なドラゴンめ」

「チビやら低俗やらと、えらい言われようじゃな」

[我の威厳はどこにいったのか]

 情けなしと頭を振る。

「よく考えろ。誰につけば利口だ。解るだろう」

「お前にだけはない」

「死にたいのか」

「それを選ぶ道もある」

「よくも言う!」

 憎たらしい奴だと歯ぎしりし攻撃を続ける。

「でもヴァラオム」

 激しいエネルギーを放つ二人を遠目で見つめるモルシャは、

「古代竜って、大した力はなかったんじゃないの?」

 伝承では巨大竜とは言われていても、他の巨竜と比べればふた回りほど小さく、ただ自然を愛してゆうるりと世界をめぐっていたという。

「だったら、あいつには敵わないんじゃないの?」

[そうではない。そうではないのだよ]

 ヴァラオムは首を振り、静かに目を閉じた。



遵従(じゅんじゅう):[名](スル)さからわず、素直に従うこと。従順。