屈強な戦士や魔法に長けた魔法使い(ウィザード)でさえ、ほとんど踏み入れないというリンドブルム山脈──行きは辛いが、帰りはカルクカンがいる。

 向こうで捕まえて乗れる程度まで調教し戻ろうというのだ。

 シレアは寒さにも強いといわれるカルクカンに期待を膨らませる。

 子どもの頃に見たカルクカンが忘れられず、彼は「旅をするならこいつだ」と決めていた。

 彼の育った村は十七歳になると成人として認められる。

 外の世界に思いをはせ、旅に出る者も少なくはなかった。

 シレアもその中の一人で、彼は成人の義を終えるとすぐさま旅の準備を始めた。

 長い旅の友としてまずはカルクカンを手に入れるため、仲間たちや長老の忠告も聞かずここまで来た。