「明確には記されなかったそうだ。しかし、先詠みが出た以上、調べない訳にはいかぬ」

 魔導師とは、ウェサシスカの魔導的部分を支えている特殊な種族だ。


 北の大陸に住み、魔法力に長けた者のみがウェサシスカに招かれる。

 外見はエルフと酷似しているが、背丈は低く浅黒い肌をしている。

 遠い昔に、極寒の地に移り住んだエルフの末裔だとも伝えられている。

 さして関心も無いように反応を示さないシレア本人を見つめ、少し戸惑いつつ話を続ける。

「貴殿を調べさせてもらいたい」

「好きにするといい」

 やはり、落ち着いた口調で応えられ眉を寄せる。ひとまずの確認に、セルナクスに視線を移した。

「彼らに部屋を」

「解りました」

「順番が逆になてしまったが、ようこそウェサシスカへ」

 レイノムスはゆっくりと立ち上がり、歓迎するように両手を広げた。