遠ざかる背中をどんなにか追いかけたかっただろう。

 すでに人間の文化に馴染んでいたヤオーツェには、リザードマンたちの文化や表情が理解できなかった。

「オイラは、みんなが怖かったんだ」

 ヤオーツェにとっては、同じ種族である仲間が警戒する対象だった。

「みんな、話がわからない人たちじゃないのに」

 怖がって踏み出さず、自らの殻に閉じこもり溶け込もうとしなかった己の愚かさに奥歯を噛みしめる。

 ケジャナルの決断を知って、ここまで来るあいだにヤオーツェは多くの事を考えた。

 彼女の勇気はどこからくるのだろうか。

 それは、変化を求めた結果に他ならない。

 変化を怖がっていた自分は、なんと馬鹿なのだろうと思わずにはいられなかった。

 自分のことを他人任せにするばかりじゃあ、どうにもならないことだってある。

「私たちガ侵してシまった過ちは消えなイ。しかし、我々は変われたのダ」

 すぐに信じろというのは無理なことくらい、解っている。