「尾があるのは便利だな」

 剣だけでなく、尾を使った攻防にシレアは感心した。

 ずば抜けた身体能力は足元が悪い場所でよく発揮されている。

「距離を取れ」

 シレアの声にケジャナルは素早く後退した。

 バシラオがそれを追おうとした刹那、背後にある異様な気配に振り返る。

 獣の目に、迫り来る大小の燃えた岩が映った。

 林の隙間から降り注がれる熱い衝撃に、バシラオは大きく叫び痛みに悶える。

「流星雨(メテオスワーム)!?」

 こんな短時間であの魔法が出せるなんて!

 ヤオーツェは、その光景に思わず声を上げる。

 当然ながら、本物の流星ではない。

 魔法によって造り出された、具現化されたエネルギーとでもいおうか。

 一定のあいだ、それは短い時間だが定められた範囲に流星として具現化されたエネルギーが降り注ぐのだ。

 発動には、長い時間と多くの魔力を必要とする。