シレアはしばらくして、消えかけた火に小枝を投げ込む。溜め息を吐き寝入っているユラウスを見下ろした。

「なんとものんびりした種族だ」

 ユラウス以外には古の民を知らないのだから、もちろん一概には言えない。

 きっとこれは彼の性格なのだろう。

 パチパチと音を立てる火を眺め、赤みがかった下弦の月を見上げる。

 野宿する時は交代で火の番をするのだが、ユラウスは必ずと言っていいほど寝てしまう。

 長年、危険の無い聖なる森で暮らしていたせいもあるのかもしれない。

 朝になって謝るユラウスに、シレアは怒ることもなく呆れて許すだけだった。

 エルフのそれと違い、シレアの許容はとても広いのだと二人は感心する事が多い。

 エルフは表情が見て取れないし、薄いというだけで感情が無い訳ではない。