広げられた大きな帆は風を受け、それにより船はゆっくりと港から離れていく。

 船客たちはまるで、今生の別れのように遠ざかる陸地をいつまでも見つめていた。

 生きて帰る保証はない──そんな感情が彼らの表情から見て取れる。

「どれくらいで着くんじゃ」

「わたしに訊かれても解りません」

「船員に訊いてみては」

 そのとき、

「順調にいけば大体十日ってとこだな」

 シレアの背後からネドリーが答えた。

 船長の言葉に、一同は互いに顔を見合わせた。

 彼の物言いからは、どう優しく見積もっても順調にはいかないのだと言っているように思えてならない。