「敵の方がまだ一歩進んでいる」

 唸るユラウスを一瞥しアレサがぽつりとつぶやいた。

「すまんの」

「それで、どうします」

「海路しかなさそうじゃな」

 アレサの問いかけに、ユラウスはいまひとつ納得のいかない表情を浮かべた。

 ここに来る前に転送屋の件も尋ねてはみたが、百年も前になくなったそうだ。

 因みに、特定の場所を一度だけ往復出来る「転送石(てんそうせき)」というものも存在する。

 ウィザードが石札(タリスマン)に魔法を込めるもので、富裕層向けの高価な品である。

 シレアたちの金をかき集めても買えるような代物ではない。

 生憎、この町には売っていないが、あったとしても買えはしない。