「ゴブリン!?」

 影の正体にアレサは驚いて思わず声を上げた。

 小柄で醜いモンスターが呻き声を上げて地面に転がると、それを合図に邪悪な気配が辺りを支配した。

 毛髪はなく土色の肌と尖った耳、ぎょろついた赤い目は燃えさかる炎のように異様なほど大きい。

「一体どういうことだ」

「囲まれている」

 シレアの声にはっとして、慌ててバチを手に大きなドラを強く叩いた。

 空気を震わせるほどの重たい音は窪地にこだまして、異常が起きた事を集落に伝える。

「なんだ?」

「どうした?」

 音に起きたエルフたちが口々に扉を開く。

「武器を取れ! 敵だ」

 アレサの声と、地面に転がっているゴブリンの死体にざわめきたち、エルフたちは一斉に戦闘体勢に入った。