草原のエルフは狩りをする傍ら、主食としている穀物を加工して食べている。

 クッキーに似た食べ物だが様々な味があり、人間には少々味気ないと感じるものの美味しく作られている。

 種族は違えど、味覚はさして変わりない。

「ユラウス殿」

 長老のふいの呼びかけに顔を上げる。

「なんですかな?」

「他の者は──」

「生憎と」

 ユラウスは最後まで発することなく目を伏せた。

「そうですか」

 彼の表情に、キケトはそれ以上を尋ねはしなかった。

 彼の哀しみの全てをくみ取ることは出来ない。

 いまはただ、彼らを歓迎し食事を共にして笑い合うことくらいだ。