「もういいわ! こっち」

 何も言わずにじっと見下ろしているシレアに業を煮やしたのか、クマのネックレスを着けた少女がその手を掴んでどこかに連れていく。

 悪意はなさそうだ。

 仕方なく彼女たちに従うと表通りから路地に入っていく。

 市場(いちば)からやや離れてはいるが、何軒かの飲み屋が開店の準備を始めていた。

 しばらく歩くと、二人は一軒の宿屋の前で止まる。

 少し奥まった所にあるためか、人通りも少なく閑散としていた。

 表通りであぶれた旅人がようやく見つけた──そんな感じの場所だ。