ガラガラガラ……
「ただいまぁ」
と純和風な我が家の玄関の戸を開けると、親父の草履が揃えてあった。
我が父、蜷川誠一郎は、蜷川家15代目当主、蜷川一刀流の師範代である。
だが、今の世の中、武道場なぞ流行る筈も無い。
父誠一郎は現在、繁華街に店を構える居酒屋の当主を生業としている。
だから、昼間のこの時間はまだ家にいることが多い。
俺は、しまった、と玄関の敷居を跨いだ足を止めた。
親父とお袋は、子供の俺が興ざめするほど仲が良いのだ。
今も二人、部屋でいちゃついているに違いない。
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