乗るはずだった電車を見送って、わたしと大樹はホームのベンチに座る。 5月といえど夜はまだ、肌寒い。 昼は暑いくらいだから薄手のジャージには春の風が冷える。 「寒い?」 「あ、ちょっと……」 「その格好だもんな……」 大樹が着ていたジャケットをわたしにかける。 ジャケットを脱いだ大樹は薄手のシャツ。 「ちょ……大丈夫だよ。大樹が寒く……」 「オレは平気だから、菜乃羽が着てろ」 「……ありがとう」 きっと、こんなこと、最初で最後だからありがたく借りておくほうがいいのかも しれない。