愛してください


途中昼食を挟んだ。
セシリアの乗る馬車の者は今夜宿に泊まり、
それ以外の者は最速スピードで城を目指す。

そして今。
セシリアの乗る馬車には、赤い日差しがカーテン越しに差し込んでいる。


「もう夕暮れですね、セシリアさま」

アビーがカーテンのかかった窓を見て言う。

「そのようね。
外を見て確かめられないのが残念だけど」

頬を膨らませ不満を漏らすセシリアを見て、アビーはふふっと笑う。

「ところで、今どのあたりかしら」

「そうですね…クレンあたりでしょうか」

「とても緑の綺麗なところだと、校長先生が仰っていたわ。…覗いちゃおうかしら」

そぉーっとカーテンに手を伸ばす。

「姫さま!いけません」

アビーの珍しく厳しい声に、セシリアの手がピタリと止まった。

「一国の代表たる姫さまには、決まりを守る義務があるのですから」

アビーは諭すように続ける。
セシリアの手はすぐに戻っていたが、彼女はしばらく不満そうな表情を浮かべたまま。





「アビー」

トゲのある声だ。

「はい。なんでしょう」

アビーは微笑んで答えた。

「姫さまはよしてと、言ったわよね?」

「すみません。
不慣れなもので。以後気をつけます」

セシリアの不機嫌な声にも、アビーは穏やかに返す。

「そう。なら…いいんだけど」

彼女にかかると怒る気がなくなってしまう。