セシリアの馬車に乗り込んできたメイドは、アビー•ベアードと名乗った。
今年25歳。結婚して4年になるそうだ。
彼女は穏やかに話し、大人の気品を感じさせる女性だった。
しばらくすると馬車は静かに停止し、姿を見せた御者がこう言った。
「もうしばらくで街につきます。
姫さまはまだ成人前ですので、覆いをしてください」
それまで穏やかに微笑んでいたセシリアの眉に皺が寄った。
「・・・どうしてもしなきゃダメなの?
光が入ってこないからイヤなのよ」
「申し訳ありません。決まりですので」
御者は大真面目な顔をして言う。
「〜っ、、、、わかったわ」
セシリアは短く息を吐くと、渋々といったふうに窓のカーテンを引いた。
ここハラス王国には、王家の女は成人するまでは民(特に男)には素顔を見せてはいけないという訳の分からない決まりがあるのだ。
最も、御者に素顔を見せている時点で、決まりが守られているかは甚だ疑問だが。
「これでいいかしら?」
「はい。ありがとうございます」
「ほんと、馬鹿げた決まりだこと。
あなたもそう思わない?」
御者は曖昧に笑うと、
質問には答えずに静かに扉を閉めた。
セシリアは肩をすくめ、馬車は再び動きだす。
あぁ、言い忘れていたが
彼女はハラス国王と王妃の間に生を受けた
第一王女、セシリア・レイシスである。
