「んぎゃーっんぎゃーっ」


まだ雪も完全に溶け切らぬころ
城の片隅に存在する小さな部屋で
ひとつの産声があがった。



今しがた産み落としたばかりの母親は、
汗で乱れた豊かな黄金の髪もそのままに
一筋の涙を流した。


しかしそれは
喜びからくるそれではなかった。


まわりの女性たちもそれを察しているのか
彼女に祝いの言葉をかける者はいない。


部屋には重々しい空気が流れ、
生まれたばかりの母親譲りの白い肌をした
ちいさな女の子の泣き声だけが響いた。





その日、母親は自ら命を絶った。