瞳でそれを拭い、前を向く奈央。
ー辛くても、逃げちゃ駄目。
拳を握り締め、優花の墓へ近付く。

「優花の事、信じたくなくて、
ずっと言えなかったんだ。でも今は
一人じゃないから…覚悟は出来てるよ」
ゴクン、と息をのむ。

「今までありがとう」

ザァーッ

強い風が吹いた。
先ほどとは違い、奈央は思わず
髪を抑え、花束を固定する。
その時確かに聞こえた。

『負けんなよ?』
優花と直の声だった。

「…はい。負けません。
直さんの残した呉羽を…
大切な仲間と共に、守って
いきます」

奈央は歩き出した。
もう後ろは向けない。

呉羽のてっぺんは、
あたしなのだから…。