丘の下の、海の真横まで
奈央は走った。花が落ちないよう、
しっかりと持ちながら。
花畑を抜けると、一つの墓が
見えて来た。

「…っ」
見た瞬間に涙する奈央。
直と会う時に我慢していた涙が、
ついに流れ出した。

「ただいま、優花…!」
今まで優花の墓を知らず校長にすら
教えてもらえなかったのだが、
友達だった玲から居場所を教えて
貰ったのだ。

「久しぶりだね、言いたい事…
沢山あるんだよ??」
子供のように無邪気な笑顔で、
奈央は言う。

「あのね、呉羽に行ってるの。
最初は嫌な学校だと思ったけれど、
ちゃんと仲間が居て、今は自分の
居場所もあって、嬉しいよ…
大好きな学校になった。道理で
優花も行きたかった訳だ」

花束を置き、墓を見つめる。
年の割にはまだ、新しかった。

「優花の探してた答え、分かったよ。
ある人が教えてくれたんだ。直さんって
言うんだけど、友達だったんだね。
今頃向こうで仲良くしてる筈だよね…」
急に口がとまる。
気が付けば、目には沢山の涙が
たまり溢れていた。