明道が衛青(えいせい)の下を訪ねたのは、獅子達が出立して数日後のことだった。



衛青に、急ぎ出兵させるためだ。



身体の回復は、十分とはいえないがこれ以上は寝ていられない。



衛青は同期だ。



同期の中でも、一番の出世頭である。



明道にも昇進の機会はあったが、敢えて拒んできた。



位が上がるほど権力は大きくなるが、民の声は小さくなる。



何より、楊太僕についていきたいと思った。



楊太僕は、今の赤国になくてはならない存在だ。



窮地に立った赤国の民を、楊太僕以外の誰が救えるというのか?



その楊太僕を救うため、明道は昼夜を駈けた。



結局、王は禁軍を動かせなかった。



だが、王が宮殿を飛び出していったとき、意味はあったのだと悟った。



衛青は明道の来訪を喜んだが、首を縦に振ることはなかった。



代わりに、騎馬百騎と歩兵四百を貸してくれた。



二週間かけ丸葉縷紅に行軍し、現在隣町に本拠地を置いて塞を偵察させていた。



獅子がこの街にいるとわかった時には、すでに塞に潜入した後だった。