父親が経営する総合病院を継ぐ為だったが、都会の水が合わず望郷の念が募ったのかもしれない。

元々平凡で事件らしい事件の無い土地だから緊急の患者や交通事故なども殆どない。

よってこの地方に唯一の設備が整った病院は、それを使用する機会も無いまま老人達の憩いの場と化している。

まれに高度な手術を要する難病もあるが、その類には大阪の大学病院ヘ紹介状を書いていたから仲埜はもう何年も大きな手術はしていなかった。

せいぜい虫垂炎しか扱わないのだから当然医療ミスもない。

自分の生き方に問題があったとすれば仕事よりも家庭の方だろう。

仲埜は30を過ぎてから市議をしている地元の有力者の一人娘と見合いで結婚した。