慣れてしまえばからかわれたりしない分、気が楽である。

今夜は鹿内の運転手だから酒は飲まされていない。それだけでも憂鬱な気持ちは軽くなる。

「俺、美穂ちゃんお持ち帰りしまあす」

女の腰に手を回したまま鹿内がふざけた声で叫んだ。

たちまち冷やかしや笑い声が起きる。

鹿内が帰ると言う事は自分も帰るという事だ。

慶介は免許は持っているが車は持っていない。
車は鹿内所有の黒い高級セダンだ。勿論行き先は決まっている。

「じゃ頼むよ慶介」

「分かってるよ」

鹿内からキーを受け取って笑って見せた。